【論文解説】急性心不全におけるダパグリフロジンの安全性・効果について: DICTATE-AHF【論文解説】

Efficacy and Safety of Dapagliflozin in Patients With Acute Heart Failure
Journal of the American College of Cardiology 2024 Apr 09. 83(14):1295-1306.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109724003760?via%3Dihub

SGLT2阻害薬は、多様な効果が報告されています。
特に、心血管イベント抑制の効果に関しては、数多くの報告がなされています。

心不全慢性期のデータは集積が進んでいますが、急性心不全症例でのエビデンスは限られています。今回取り上げられた論文は、この急性心不全(DM合併)に対して24時間以内に導入した研究です。

目次

【要約】

急性心不全(AHF)患者240例を対象に、ダパグリフロジンの早期投与の利尿効果と安全性を評価しています。

多施設共同非盲検試験において、来院後24時間以内の患者240例を、ダパグリフロジン10mgを1日1回投与する群と、5日目または退院まで利尿薬の漸増をプロトコール化した通常の治療を行う群に無作為に割り付けられています。主要アウトカムであるループ利尿薬累積投与量あたりの累積体重変化で表される利尿効率は、ベースライン体重で調整した比例オッズモデルを用いて治療割り付け間で比較されています。

結果 利尿効率については、ダパグリフロジン群と通常群の間に有意差はありませんでした(OR:0.65;95%CI:0.41-1.02;P=0.06)。ダパグリフロジンはループ利尿薬の投与量を減らし(560mg[Q1-Q3:260-1,150mg] vs 800mg[Q1-Q3:380-1,715mg];P = 0.006)、通常治療と同等の体重減少を達成するための静脈内利尿薬の増量は少なかった(P≦0.05)。ダパグリフロジンの早期投与開始により、糖尿病、腎、心血管の安全性イベントは増加しなかった。ダパグリフロジンは24時間尿量中央値(P = 0.03)および尿量中央値(P = 0.005)の改善と関連し、試験期間中の退院を早めた。

結果のまとめですが、ダパグリフロジン投与群と通常治療群とで利尿効率に差はなかったが、ダパグリフロジンはループ利尿薬の投与量を減らし、同等の体重減少を達成しています。また、ダパグリフロジンの早期投与は糖尿病、腎、心血管の安全性イベントを増加させず、退院を早めました。

【コメント】

ダパグリフロジンの早期投与は、ループ利尿薬の投与量を減らす効果があり、安全性も確認されました。しかし、利尿効率については通常治療と差がなく、統計的に有意な低下は見られていません。一方でNa利尿は向上し、退院までの期間に対する前向きな効果が認められている。これらの結果は、ダパグリフロジンがAHF治療の一部として有用である可能性を示している。

発表後の討議に関して
・尿路感染の問題について
・SGLT2阻害薬の電解質に対する影響について
・本論文のprimary endpointの設定について

発表:森永先生   文責:吉岡

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