【論文解説】心原性ショックへの集学的治療について:日本発のエキスパートコンセンサス

Circulation Journal doi:10.1253/circj.CJ-25-0192
Expert Consensus Statement on the Evaluation, Treatment, and Transfer of Cardiogenic Shock Using a Delphi Method Approach ― A Report of the Japan Critical Care Cardiology Committee (J4CS) ―

本コンセンサスでは、**現場(Step 1)→救急外来(Step 2)→循環器集中治療室(CICU)(Step 3)**という時系列に沿ったマネジメントアルゴリズムが提案されています。さらに、必要に応じて「追加ステップ」として高度医療(例:機械的循環補助、CAG/PCI、心筋生検など)や高次施設への搬送を含みます。

Step 1:現場対応

CSの早期認識が重要で、意識障害、四肢冷感、低血圧など11の兆候が挙げられます。疑いがあれば「CS疑い」としてトリアージし、PCI可能施設への搬送が望まれます。搬送前の12誘導心電図取得と送信も有効とされます。

Step 2:救急外来

早期の診断と重症度評価が目的で、10分以内の12誘導心電図、心エコー、動脈血液ガス(特に乳酸)、心筋トロポニン、BNP等の迅速な検査が推奨されます。必要に応じて呼吸管理(気管挿管、NIV)、血管作動薬の使用、ショックチームの起動が行われます。

Step 3:CICU

CICU入室後は、60分以内に血行動態安定化を目指すことが求められます。目標値としては、SBP ≥90mmHg、MAP ≥65mmHg、CI ≥2.2L/min/m²、PCWP <18mmHg、乳酸値の24時間以内クリアランスなどが設定されます。必要に応じてPAC(スワンガンツ)を挿入し、治療反応性を確認します。

追加ステップと転院の判断

ACSに起因するCSではFMCから90分以内の再灌流を目指します。初期治療抵抗例にはMCS(IABP、IMPELLA、ECMOなど)を導入。施設レベルでの限界を感じた時点で、早期に「ショックセンター」へのコンサルト・搬送を検討することが推奨されます。

総括

本コンセンサスは日本におけるCS対応の標準化とタイムラインベースの意思決定支援を目的としており、特に多職種連携(ショックチーム)と地域連携(ハブ・スポーク体制)の重要性が強調されています。

発表:本郷先生   文責:吉岡

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