N Engl J Med. 2024 Jan 18;390(3):212-220.
Long-Term Outcomes of Resynchronization-Defibrillation for Heart Failure
背景
再同期除細動療法(CRT)を受けた心不全患者では、5年間の死亡率が低下することが以前の研究(RAFT試験)で示されましたが、その長期的な生存効果については報告が限られていました。本研究では、NYHAクラスIIまたはIIIの心不全、左室駆出率(LVEF)30%以下、QRS時間120msec以上(またはペースメーカー使用時は200msec以上)の患者を対象に、CRT-Dと植込み型除細動器(ICD)の長期生存率を比較しました。
方法
ランダム化比較試験で、ICDのみを受けたグループとCRT-Dを受けたグループに分けられました。主要評価項目は全死亡率、二次評価項目は全死亡率、心臓移植、または左室補助装置(LVAD)の植込みを含む複合イベントでした。参加者は8つ施設から選ばれ、1050人の患者が最長14年にわたって追跡されました。
結果
ICDグループの530人中405人(76.4%)、CRT-Dグループの520人中370人(71.2%)が死亡しました。CRT-Dを受けた患者の死亡までの時間はICDのみを受けた患者よりも長く、CRT-Dの長期的な生存利益が示唆されました。複合イベント(全死亡、心臓移植、またはLVADの植込み)の発生率もCRT-Dグループで低い傾向が確認されました。
結論
左室駆出率が低下し、QRSが延長したNYHAクラスIIまたはIIIの心不全患者において、CRT-D治療はICD単独治療に比べて長期的な生存利益をもたらすことが確認されました。CRT-D治療の生存利益は、中央値で約14年の追跡期間にわたり持続しました。
この研究は、CRT-Dの長期的な有効性を示し、心不全治療の選択肢としての重要性を強調しています。治療の選択においては、患者の個別の病態や心電図所見、治療への反応を考慮する必要がありますが、CRT-Dの導入が長期的な改善につながる可能性があることが示されています。
発表後は、死亡原因は何か、左脚領域ペーシングの意義等に関して討議が行われました。
発表:坂井先生 文責:吉岡