Circulation. 2022;146:808-818.
背景:SGLT2阻害薬はEFの低下した心不全症例(HFrEF)において基礎治療であるが、心不全に対する有効性のメカニズムは十分に解明されていない。我々は、めたを用いて、SGLT-2阻害薬による代謝経路の変化、および転帰との関係を調査した。
方法:DEFINE-HF(Dapagliflozin Effects on Biomarkers, Symptoms and Functional Status in Patients With Reduced Ejection Fraction)試験は、HFrEFにおけるダパグリフロジンのプラセボとの対照試験であった。無作為試登録時およびSGLT2阻害や導入後12週目の血漿サンプルについて、63個の代謝物(アシルカルニチン(脂肪酸酸化マーカー)45種、アミノ酸15種、従来型代謝物3種)の標的質量分析プロファイリングを実施した。混合モデルを用いて、治療によって変化を示した主成分分析定義の代謝物クラスターを同定し,代謝物クラスターの変化と症状(KCCQスコア)および NT-proBNPの変化との関係を検討した。
結果:ダパグロフロジンはメタボローム解析により短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、ケトン関連代謝産物を上昇させており、HFrEFにおけるケトンと脂肪酸の関連を示唆している。しかし、ケトーシスに至る頻度は低かった。長鎖脂肪酸、芳香族アミノ酸は独立した心不全増悪の因子だった。SGLT2iのミトコンドリア機能への良い影響や代謝的リプログラミングを明らかにし、心不全悪化のバイオマーカーを発見した。
結論:HFrEFにおけるSGLT-2阻害剤のプラセボ対照試験において、メタボローム解析を行い、主要代謝経路に対するダパグリフロジンの効果を観察し、HFrEF患者におけるSGLT-2阻害剤のケトンおよび脂肪酸生物学における変化の役割を支持する結果であった。ケトーシスは生理的なレベルのみ観察された。さらに、HFrEFの有害な転帰と関連するいくつかの代謝バイオマーカーを同定した。
院内では
・SGLT-2阻害薬は複数社から出ているが、クラスエフェクトはありうるか。
・同じく糖尿病薬であるDPP4阻害薬の心不全への影響についての臨床データについての検討。
・既存の糖尿病薬が心不全を悪化させる原因として、低血糖が原因と考えられているが、SGLT-2阻害薬はインスリンの分泌量を増やさないために、低血糖を起こしにくいことが、心不全を悪化させないと考えられている。
・ケトン体が増えると、燃費のいいガソリンのようなものなので、心筋にとっていい影響があること。
・NT-Pro BNPは肥満で低下していしまうため、SGLT-2阻害薬により肥満が解消されるとNT-Pro BNP自体は上昇してしまい、心不全への影響のバイオマーカーとしては使用しにくいこと。
・SGLT-2阻害薬が、肝臓を介して心不全をよくしている可能性があること。
などが話し合われました。
発表者:白木先生 文責:横井