【論文解説】がん診断から1年経過した症例の心血管死は、がんによる死亡率を上回るのか?

Does Cardiovascular Mortality Overtake Cancer Mortality During Cancer Survivorship?: An English Retrospective Cohort Study
Helen Strongman , Sarah Gadd , Anthony A. Matthews , Kathryn E. Mansfield , Susannah Stanway , Alexander R. Lyon , Isabel dos-Santos-Silva , Liam Smeeth , and Krishnan Bhaskaran
J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2022 Mar, 4 (1) 113–123

がん治療後に心血管疾患を発症した症例に遭遇することは珍しくありません。一般的にがん症例は、一般集団と比較して心血管リスクが高いことが知られ、特に年齢・がん種別などがそこに関与していることが知られています。近年の癌診療の進歩もあり、癌ステージや癌種別を含めた患者背景によっては、長期生存が可能となっています。このような背景の中で、がんを有する症例が最終的な死亡原因が癌なのか、心血管死なのかを明らかにする目的で、本研究が行われています。

本研究では、癌診断から1年間以上生存した104028例の癌患者を対象に解析が行われています。癌種別は主たる9つの種別に分類されています。
また年齢グループ別で解析を行われています。エンドポイントとしては、死亡、特に心血管死亡率と原発癌死亡率の比較を行っています。

結果としては
①40-59歳では子宮癌のみが心血管死亡が原発癌の死亡率を追い越しました。
②60-79歳では前立腺癌、白血病以外は心血管死亡が原発癌の死亡率を追い越しました。
③80歳以上では、全ての癌腫で心血管系の原因による死亡率が原発癌による死亡率を上回っていました。

いくつかの癌では初回診断時より心血管死亡率が癌死亡率を追い越す結果で、高齢になるほどその傾向は明らかでした。予想された通り、癌患者でも心血管死亡が少なくない現状が示されており、日常診療でも心血管リスクが高い方は心血管評価を行う重要性を再認識しました。

本論文を元に、以下のようなポイントで討議がなされました。
①癌のステージに関しては検討されているのか。
②海外の癌治療の現状はどうなのか、どの程度までの治療が行われているのか。
③肺癌など、同じようなリスクを有する癌種に関する検討はどうか。
④癌死の定義に関しては、定義自体が難しいのではないのか。
⑤これまでの大規模試験は癌症例を除外されており、癌を有するグループへの検討が必要となる。
⑥心血管疾患と同様のリスクを有する癌に関する検討も必要となる。

発表者: 陳先生, 文責:吉岡

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