【論文解説】 Watchmanデバイスによる左心耳閉鎖後の半量DOACと通常抗血栓療法の比較

Watchmanデバイスによる左心耳閉鎖後の現行の抗血栓薬治療のプロトコルと半量のDOACを使用したプロトコルを比較した論文を樗木先生が紹介してくれました。

Half-Dose Direct Oral Anticoagulation Versus Standard Antithrombotic Therapy After Left Atrial Appendage Occlusion

Domenico G. Della Rocca, MD, Michele Magnocavallo, MD, Luigi Di Biase, MD, PHD, Sanghamitra Mohanty, MD, Chintan Trivedi, MD, MPH, Nicola Tarantino, MD, Carola Gianni, MD, PHD, Carlo Lavalle, MD, Christoffel Johannes Van Niekerk, MD, Jorge Romero, MD, David F. Briceño, MD, Mohamed Bassiouny, MD, Amin Al-Ahmad, MD, J. David Burkhardt, MD, Veronica N. Natale, MPH,
G. Joseph Gallinghouse, MD, Armando Del Prete, MD, Giovanni B. Forleo, MD, PHD, Javier Sanchez, MD, Dhanunjaya Lakkireddy, MD, Rodney P. Horton, MD, Douglas N. Gibson, MD, Andrea Natale, MD

JACC Cardiovascular Interventions, 2021 Nov.8;(14):2353-2364

現在、Watchman術後のプロトコルは、術後45日までは経口抗凝固療法(OAC)+単剤抗血小板薬(ASA)、45日後から6ヶ月後まで抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)、6ヶ月後以降はASAとされています。しかしながら、出血リスクが高い症例で以後の出血イベントを減らすことを目的として左心耳閉鎖術を選択することが多い中で、一時的にではあっても抗血栓治療を強化せねばならないというジレンマがあります。

本研究では、通常治療群と半量DOAC(hdDOAC)群(術後45日までhDOCAC+ASA、45日後以降はhdDOACのみ)に分けて前向き比較研究を行っています。使用するDOACは、アピキサバン5mg2×もしくは、リバロキサバン10mg1×で、CHADS2 スコア2点以上、CHA2DS2-VAScスコア3点以上を対象とし、術前の時点で長期の抗血小板薬治療の適応がある、もしくはDOAC減量基準に該当する人は除外しています。

通常治療群357例、hsDOAC群198例で比較しています。平均年齢は75.1歳です。両者を比べると、術後18ヶ月の経過でhsDOAC群では、デバイス関連血栓症、血栓塞栓症、主要出血イベント、全てが著しく抑制されました。通常治療群でのデバイス関連血栓症の内訳は、12例のうち7例がDAPT期間中、5例がASA期間中のイベントでした。複合エンドポイントでもhsDOAC群が良い結果でしたが、死亡に有意差はありませんでした。

limitationとしては、患者割り付けが医師の裁量に委ねられていること、また、デバイスの位置やサイズ、心房細動の持続時間、もやもやエコーの有無などは不明であること、出血リスクが必要要件でなく含まれていないので実臨床に直接当てはめることが困難であること、使用されているDOACが2剤に限定されていること、などがあります。

hdDOAC療法が完璧と言える結果ではありませんが、現状、出血リスクが高い症例でのイベントを回避するために、主治医判断でプロトコルを逸脱して治療を行っている症例が多く、今回のこの結果は、一つの判断材料となりうると考えられます。

フロアからの質問・コメントとして以下のようなものがありました。

・術後45日までのイベントが少なく、特にhdDOAC群でほぼないことを考えると、hdDOAC+ASAで十分と考えてよいかもしれない。

・当院でもどのような対応が最も良いのか、考えていく必要がある。

発表:樗木先生、 文責:矢島

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