【論文解説】動脈硬化性心血管疾患患者におけるPCSK9阻害薬長期投与について:Long-Term Evolocumab in Patients With Established Atherosclerotic Cardiovascular Disease

Long-Term Evolocumab in Patients With Established Atherosclerotic Cardiovascular Disease
Michelle L O’Donoghue 1 , Robert P Giugliano 1 , Stephen D Wiviott 1 , Dan Atar 2 3 , Anthony Keech 1 , Julia F Kuder 1 , KyungAh Im 1 , Sabina A Murphy 1 , Jose H Flores-Arredondo 4 , J Antonio G López 4 , Mary Elliott-Davey 5 , Bei Wang 4 , Maria Laura Monsalvo 4 , Siddique Abbasi 4 , Marc S Sabatine 1
Circulation . 2022 Oct 11;146(15):1109-1119.

FOURIER試験(Further Cardiovascular Outcomes Research With PCSK9 Inhibition in Subjects With Elevated Risk)では、PCSK9型阻害薬エボロクマブが心血管イベントのリスク低減が示されています。しかし、大規模かつ長期にわたるデータに関して、特に早く開始することの意義は十分に検討されていません。

先行研究であるFOURIER試験は、動脈硬化性心血管疾患でLDL-Cが70 mg/dL以上でスタチン投与を受けている患者27 564例を対象に、エボロクマブとプラセボを無作為に比較検討しています。本試験ではFOURIER試験を終了した患者さんを、2つの非盲検延長試験でプラセボ群にもエボロクマブを投与して評価されました。
主要評価項目は有害事象発生率でした。

結果としてFOURIER-OLEには合計6635人の患者が登録され、3355人がエボロクマブに、3280人がプラセボに無作為に割り付けられています。追跡期間中央値は5.0年、エボルクマブ投与期間は最大8.4年でした。エボロクマブ長期投与による重篤な有害事象、筋関連事象、新規発症糖尿病、出血性脳卒中、神経認知イベントの発生率は、プラセボ投与患者を上回ることはありませんでした。当初からエボロクマブに割り当てられた患者では、プラセボ→エボロクマブ追加群と比較して、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症または冠動脈再灌流による入院のリスクが15%低い結果でした(ハザード比、0. 85 [95% CI, 0.75-0.96]; P=0.008)。心血管死、心筋梗塞、または脳卒中のリスクが20%低下し(ハザード比, 0.80 [95% CI, 0.68-0.93]; P=0.003)、心血管死のリスクも23%低下しました(ハザード比、 0.77 [95% CI, 0.60-0.99];P=0.04)。

結論としては、『エボロクマブによる長期のLDL-C低下作用は、8年以上にわたって持続的に低い有害事象発生率と関連しており、治療開始が遅れた場合と比較して心血管イベントをさらに減少させた』と結ばれています。

発表後の議論として、以下のような点が取り上げられました。
・総死亡では差がつかない結果の考察はどうか。
・PCSK9阻害薬はどこまで続けるべきなのか、中止の是非について。
・エゼチミブ内服率に関して(研究の限界として)。
・この論文を、どのように実臨床に活かすのか、特に早期開始の意義。
・この薬剤の心不全や腎不全への影響と、結果の中での全死亡との関わり。

発表:夏秋先生 文責:吉岡

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