【論文解説】CLEAR試験:急性心筋梗塞へのコルヒチンの効果は?

N Engl J Med. 2024 Nov 17. doi: 10.1056/NEJMoa2405922.
Colchicine in Acute Myocardial Infarction

背景

急性心筋梗塞(AMI)患者において、炎症は動脈硬化の進展および心血管イベントの発生に関与していることが知られています。コルヒチンは抗炎症作用を有し、これまでの研究で心血管イベントのリスクを低減する可能性が示唆されていました。本研究では、コルヒチンがAMI後の主要な心血管イベントを抑制するかを評価されています。

方法

  • 試験デザイン: CLEAR試験は、104施設が参加した多国籍、二重盲検、プラセボ対照、ランダム化臨床試験。
  • 対象患者: STEMIまたはNSTEMIを発症し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた7062人。
  • 介入: コルヒチン0.5mg/日(初期90日間は体重によって用量調整)またはプラセボを投与し、中央値3年間追跡。
  • 主要評価項目: 心血管死、再発心筋梗塞、脳卒中、虚血性再血行再建の複合イベント。
  • 副次評価項目: 心血管死、再発心筋梗塞、または脳卒中の複合イベント、C反応性タンパク(CRP)の変化、安全性。

結果

  • 主要評価項目: コルヒチン群の9.1% vs プラセボ群の9.3%(ハザード比0.99、95%信頼区間[CI] 0.85–1.16、P=0.93)で有意差なし。
  • CRPレベル: コルヒチン群で有意に低下(−1.28mg/L, 95% CI −1.81~−0.75)。
  • 安全性: コルヒチン群で下痢の発生率が高かった(10.2% vs 6.6%, P<0.001)。一方で、重篤な感染症や心血管死のリスクには有意差なし。

考察

CLEAR試験では、AMI後にコルヒチンを3年間投与しても、主要な心血管イベントのリスクを低減しないことが示されました。一方で、CRPの低下や生物学的な抗炎症効果は確認されましたが、臨床的な利益には結びつきませんでした。過去のCOLCOT試験(AMI後30日以内にコルヒチンを投与)やLODOCO 2試験(安定冠動脈疾患患者対象)での有効性とは対照的な結果となりました。

発表後の討議

コルヒチンの使用は、CRP低下などの生物学的効果はあるものの、主要な心血管アウトカムの改善には寄与せず。
他の研究で指摘されているコルヒチンによる全死亡増加傾向は確認されず。
容量と結果の関係について。
炎症のフェーズによる薬剤の効果の差は。

発表 平井先生   文責 吉岡

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