【論文解説】APPRAISE ATP試験:埋め込み型デバイスにおけるATPの効果は?

JAMA . 2024 Nov 26;332(20):1723-1731.
Assessment of Antitachycardia Pacing in Primary Prevention Patients: The APPRAISE ATP Randomized Clinical Trial

「APPRAISE ATP試験」は、植込み型除細動器(ICD)の一次予防患者におけるATP (antitachycardia pacing)の有効性を、現代のプログラミング基準に基づいて評価する多国籍・多施設ランダム化臨床試験です。本研究の目的は、ATP+ショック戦略が、ショックのみの戦略と比較して、初回ショックまでの時間を延長できるかどうかを検証されています。

解析対象:左室駆出率が35%以下でICDの一次予防適応を持つ2595名(平均年齢63.9歳、女性22.4%)
ATP+ショック群とショックのみ群に1:1の割合でランダム化され、平均38か月間追跡されています。
IHDは全体で6割程度、至適薬物治療も一定以上導入されていました。

結果として、
・初回ショックまでの時間はATP+ショック群で有意に延長(ハザード比0.72、95.9%信頼区間0.57-0.92、P=0.005)。ATP+ショック群では、ショックのみ群と比較して、初回適切ショックおよび不適切ショックのリスクもそれぞれ27%および35%低下しました。一方で、総ショック負担(100人年あたりのショック回数)は両群間で有意差がありませんでした(P=0.70)。全死亡率やショック+全死亡率の複合エンドポイントにおいても両群間で有意差は見られませんでした。

ATPの具体的な効果として、初回治療エピソードでATPによりショックを回避できた患者は45.3%でした。ただし、ATPが不整脈を加速させるリスク(初回エピソードで3.7%)も確認されました。また、VT/VFストームの総発生率はATP+ショック群で高かったものの、統計的有意差は初回イベントにおいてはありませんでした。

本研究は、一次予防患者におけるATPの利用が初回全原因ショックまでの時間を延ばすことを示しましたが、総ショック負担や死亡率の低下は示されませんでした。これらの結果も考慮しながら、一次予防のICD選択におけるATP使用のメリットとリスクを慎重に考慮する必要があることを示しています。

      発表 金子先生  文責 吉岡

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