【論文解説】心房細動の性差について:Gender and contemporary risk of adverse events in atrial fibrillation

Gender and contemporary risk of adverse events in atrial fibrillation
Eur Heart J. 2024 Sep 29;45(36):3707-3717.

この論文「Gender and contemporary risk of adverse events in atrial fibrillation」は、心房細動(AF)患者における抗凝固薬の選択において、性別がどのような役割を果たすかを検討したものです。特に、過去の研究では女性が脳卒中のリスクが高いと報告されていましたが、性別がリスク予測に与える影響が再評価されています。

この研究は、2005年から2020年にかけてのUKの医療データベースから得られた1658万人以上の患者データを用いて、40歳から75歳の心房細動患者約7万8,000人を対象に行われました。対象患者には、過去に脳卒中を発症していない、または抗凝固薬を使用していない人が含まれています。研究の目的は、性別が臨床的なリスク評価においてどのように影響するかを調査することです。

結果として、性別に関係なく、死亡や脳卒中、動脈血栓症のリスクには顕著な差が見られませんでした。むしろ、女性は男性よりも全体的な死亡率が低く、これが一次アウトカム(死亡、脳卒中、動脈血栓症の複合)に影響していることがわかりました。また、従来のCHA2DS2-VAScスコアと比較して、性別を考慮しないCHA2DS2-VAスコアの方が、予測精度が若干高いことも示されました。

結論として、この研究は、心房細動患者における抗凝固療法のリスク評価から性別を除外することで、リスク評価がよりシンプルになり、予測精度が向上する可能性を示唆しています。性別を用いないリスク評価の導入は、治療方針の一貫性を高め、平等な医療提供に貢献する可能性があると述べられています

発表後は以下の項目で検討が行われました。

・心筋病理を元にした性差について

発表:山口先生   文責:吉岡

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